―「減塩」と「カリウム摂取」のバランスをみる新しい指標―
高血圧の予防や治療では、昔から「減塩」が大切とされてきました。
近年は、それに加えて「カリウムを適切にとること」も重要と考えられています。
そこで注目されているのが、尿検査で調べる尿ナトリウム/カリウム比です。
一般には尿ナトカリ比、または尿Na/K比とも呼ばれます。
尿ナトカリ比とは
尿ナトカリ比は、尿中に排泄されたナトリウムとカリウムのバランスを表す数値です。
ナトリウムは主に食塩に含まれ、摂りすぎると血圧を上げやすくなります。
一方、カリウムは野菜、果物、豆類、いも類、海藻類などに多く含まれ、体内の余分なナトリウムの排泄を助ける働きがあります。
つまり、尿ナトカリ比が高い場合は、「塩分が多い」または「カリウムが少ない」食生活になっている可能性があります。
なぜ高血圧診療で注目されているのか
日本人は、世界的にみても食塩摂取量が多い傾向があります。高血圧では食塩摂取量を減らすことが重要ですが、食事内容は日によって変わるため、問診だけでは実際の塩分バランスを正確に把握しにくいことがあります。
尿ナトカリ比は、食事から摂取したナトリウムとカリウムのバランスを、尿検査で客観的に確認できる点が特徴です。
日本人を対象とした研究では、尿ナトカリ比が高いほど血圧が高い傾向があり、尿ナトリウムや尿カリウムを単独でみるよりも、血圧との関連が強いことが報告されています。
目標値の目安
日本高血圧学会のコンセンサスステートメントでは、健常な日本人における尿ナトカリ比の目標として、次のような考え方が示されました。
| 尿ナトカリ比 | 目安 |
| 2未満 | 至適目標:理想的なバランス |
| 4未満 | 実現可能目標:まず目指したい目標 |
| 4以上 | 塩分過多、またはカリウム不足の可能性 |
最初から「2未満」を目指すのが難しい場合でも、まずは「4未満」を目標にして、食生活を少しずつ整えていくことが現実的です。
測定するときの注意点
尿ナトカリ比は、1回の検査だけで判断しすぎないことが大切です。
食事内容、採尿時間、前日の外食、飲酒、発汗量などによって、尿ナトカリ比は日々変動します。
日本高血圧学会のステートメントでは、より正確に評価するためには、週4日以上、異なる時間帯に採取した随時尿の平均値を用いることが推奨されています。
通常診療で週4日以上の尿検査をすることは現実的ではないため、検査結果は「その時点での参考値」としてとらえ、定期的に尿ナトカリ比を測定しながら、家庭血圧などと合わせて考えることが大切です。
尿ナトカリ比を下げるためにできること
尿ナトカリ比を下げるには、単に「塩分を減らす」だけでなく、ナトリウムを減らし、カリウムを含む食品を適切に増やすという両面から考えることが重要です。
1.塩分を減らす工夫
めん類の汁を残す、漬物や加工食品を控える、しょうゆやソースを「かける」より「つける」にする、だし・香辛料・酸味を活用する、といった工夫が役立ちます。
また、外食や中食、総菜、加工食品では塩分が多くなりやすいため、栄養成分表示の「食塩相当量」を確認する習慣も大切です。
尿ナトカリ比は「食生活の見える化」
尿ナトカリ比は、高血圧を診断するための検査ではありません。また、薬の必要性を単独で判断する検査でもありません。
しかし、普段の食生活が血圧にどのように関係しているかを考えるうえで、非常にわかりやすい指標です。
家庭血圧、診察室血圧、腎機能、尿蛋白・尿アルブミン、体重、生活習慣などとあわせて評価することで、より具体的な高血圧管理につなげることができます。
まとめ
尿ナトリウム/カリウム比は、
「塩分を減らせているか」
「カリウムを含む食品を適切にとれているか」
を確認するための新しい指標です。
目標は、まず4未満、将来的には2未満を目指すことが提案されています。
高血圧対策は、薬だけでなく、毎日の食事・家庭血圧測定・体重管理・運動などを組み合わせて行うことが大切です。
尿ナトカリ比は、その中でも食生活を「数値で見える化」し、具体的な行動につなげるために役立つ検査といえます。
参考文献
1.Hisamatsu T, Kogure M, Tabara Y, et al. Practical use and target value of urine sodium-to-potassium ratio in assessment of hypertension risk for Japanese: Consensus Statement by the Japanese Society of Hypertension Working Group on Urine Sodium-to-Potassium Ratio. Hypertension Research. 2024;47:3288-3302. doi:10.1038/s41440-024-01861-x
2.日本高血圧学会 尿ナトリウム/カリウム比ワーキンググループ 日本人のための尿ナトカリ比の目標値と適切な評価方法を提唱 2024年10月8日
3.日本高血圧学会 高血圧管理・治療ガイドライン2025
| 医院名 |
|---|
| 昭和クリニック |
| 院長 |
| 新井 光太郎 |
| 住所 |
| 〒369-0115 埼玉県鴻巣市吹上本町4-10-9 |
| 診療科目 |
| 内科・循環器科 |
| 電話番号 |
| 048-548-0025 |